新型コロナウイルスの性質を知る

 

この章ではコロナウイルスの種類、MERS(中東呼吸器症候群)から学べる事、ウイルスの伝播様式、ウイルスの物質上に存在する時間、無症候性病原体保有者からの感染報告、ウイルスの排出期間と排出部位、温度と湿度の影響を取り上げます。

 

 

コロナウイルスとは

従来のコロナウイルスは風邪の原因の1割から3割を占めていたウイルスです。風邪ウイルスのひとつであるライノウイルスの流行が少ない時期にコロナウイルスによる風邪がみられていたこともありました。

ウイルスは大別してDNAウイルスとRNAウイルスがあります。新型コロナウイルスは被膜(エンベロープ)をもつ一本鎖 RNAウイルス です。下記に電子顕微鏡写真と構造を示します。

ちなみにインフルエンザウイルス、エボラウイルス、風疹、はしかもこの被膜を持つRNAウイルスの仲間になります。電子顕微鏡で見ると直径は65ー200ナノメートルと非常に小さく大小様々な大きさのものがあるとのことです。

コロナウイルスには風邪の原因としての229E、OC43、NL63、HKU-1の4種類が知られており、それに加えて2003年に中国広東省を起源としたSARS(重症呼吸器症候群)が、2012年には中東を起源としたMERS(中東呼吸器症候群)が起こりました。

SARS、MERS、今回の新型コロナウイルス感染症は動物から人にうつったことをきっかけに人から人に感染し、急速に重症化をひき起こすコロナウイルス群です。

 

 

 

 

MERS(中東呼吸器症候群)からの学べること(2012年から2019年までの総括)

 

2012年にサウジアラビアを中心に起きたMERS(中東呼吸器症候群)に関して今回の新型コロナウイルス感染と多くの類似点がみられておりまとめてみます。

MERSは2012年から2019年までに2499人に罹患し858人の死者を出しています。致死率はなんと 34.3%と非常に高いです。罹患者は男性64%女性36%と男性に多く、国別ではサウジアラビアの次に韓国が多いです。ヒトコブラクダを介して人から人へ感染しました。

下記表の下に見られますように2012年から2019年まで流行を繰り返していたことに注意が必要です。発症するまでの潜伏期は2-14日(中央値5.2日)。糖尿病、心、肝、腎臓病、がん、60歳以上のかたは潜伏期が長かったり、ウイルスの排出が長期に及んだり、重症化がみられました。

新型コロナウイルス感染症と同じく重症化する際は発熱後急速に咳が出て呼吸状態が悪化し、多臓器不全が進行するという特徴があります。また無症候性から軽症者は25-50%にみられています。5歳以下の感染は38名確認されうち2名が重症化しています(この2名は腎臓に基礎疾患がありました)。

 

 

今回の新型コロナウイルス(COVID19)もこのコロナウイルスが動物を経て人間に移り病原性を獲得して人から人へうつったものと考えられています。遺伝子を探っていくとコウモリが人にうつったかもしくはコウモリから他の動物を介して人にうつったと考えられています。

 

 

 

新型コロナウイルスの伝播様式について

飛沫感染:くしゃみや咳によってその飛沫についたウイルスが10メートル弱飛んでいくことが知られています。食事中や室内運動中も気づかずに周囲に飛沫が飛んでいくことがあり、近くにいたかたが感染していくことがあります。今回の感染の主要な伝染経路とみられています。

屋形船、ライブハウス、病室、トレーニングジムなど室内空間でマスクを外して食べながら話していたり、正常より呼吸が荒くなるような場所がクラスターとなりやすい傾向があります。

感染を拡大させないためにも咳やくしゃみをする際はマスクを着用するか、ない場合はハンカチや衣服等でおさえて飛沫が飛ばないようにしてください。

 

接触感染:物からの感染 (fomite infection) に関しては新型コロナウイルスは銅の表面で4時間、段ボールで24時間、ステンレスで48時間、プラスティックで72時間生存していると報告されています(下表の下)。

 

空気感染:このウイルスが長時間空気中に浮遊している状態は今のところないと言われていますが、かなり小さな飛沫(エアロゾール)の状態で空中に最大3時間漂っているとの報告があります。粒子が細かいだけに鼻腔やのどにとどまらず気管支や肺のほうに到達する可能性があります。人との距離を2メートル以上保ち、多人数での密室にいることを避け、できるだけ換気を行う重要性が言われています。

 

super-spreaders という周囲にウイルスを大量に拡散する方々がいることも報告されています。驚くことに症状が軽くても、症状がなくても大量のウイルスを鼻汁、尿、便、血液から排出していることが報告されています。よってsuper-spreader のかたと空気の流れの悪い密室空間に一緒に入ればクラスターが形成されることは容易に想像されます。

SARSの事例では感染後2ヶ月にわたってウイルスの排出がみられたとの報告があります。発熱や咳嗽の症状がおさまってもウイルスの排出がなくなるまでしばらく自宅に待機するなど他の方へウイルスをうつさないことが次の感染拡大を防ぐことにつながります。

 

 

 

 

 

エアコンの対流に乗った微小飛沫がレストラン内感染を拡大させたと考えられる中国からの報告

 

これから社会活動を再開させていくにあたり特に室内での感染対策は大切になります。その中でレストランにおける空調による空気の流れも注目されています。

次に紹介するのは2020年1月23日に中国のレストランで起こった感染報告です。

 

COVID-19 outbreak associated with air conditioning in restaurant, Guangzhou, China, 2020. Emerg Infect Dis.

DOI: https://doi.org/10.3201/eid2607.200764

 

武漢市から広州市に来た旅行者が1月23日レストランで食事をとりました。Aテーブル1番の人は当時症状はなく、食事をしたその日の夜に発熱、咳嗽を来たして新型コロナウイルス感染症と診断されました。つまり食事中は発症する前の無症候性病原体保有者だったわけです。

その後向かいに座っていたA2番の人が3日後の1月27日に感染して、以降同じAテーブルで食事を囲んだ人たち、隣のBテーブルで食事をしていた人たち、A1番の背中にあたるCテーブルにいた人たちまでにも感染していきます。

飛沫感染だけでは説明ができない微小飛沫が空調の流れに乗って対流する中で感染していった可能性を報告しています。

 

 

 

バス内感染の報告

 

公共の交通機関に乗る際も気になります。バス内で感染が広がったと考えられる2つの報告を紹介します。

1つ目は中国浙江省からの報告です。

Airborne transmission of COVID-19: epidemiologic evidence from two outbreak investigations DOI: 10.13140/RG.2.2.36685.38881

 

宗教行事に向かう往復100分のバスの中で 64歳女性の初感染者から感染が広がった様子がバスシートで表示されています。バスは空調循環がついていたとのことです。

下図上を見るとバス内の感染は初感染者の近くに座っていた人だけに集中していないことが分かります。前方から最後尾まで。また最もウイルスの被曝が多かったであろう右隣の人は感染していません。

通気孔のある窓(緑色)に近い方に座っていた乗客の感染は少ないことが分かります。やはり換気が大切なことが示唆されます。

 

 

 

 

2つ目の論文は中国湖南省からの報告です。

An epidemiological investigation of 2019 novel coronavirus diseases through aerosol-borne transmission by public transport.

この論文は雑誌 Practical Preventive Medicine に2020年3月5日発表されましたが、わずか5日後の3月10日に論文の修正ではなく撤回となりました。世界的に感染が拡大していく中で感染経路として空気感染があるのではないかと話題になり始めた時期でした。撤回された理由は公表されていません。

もし感染者の把握が事実だったと仮定して上図下にあるようにバス内での感染が見た目で分かりやすい報告です。

初感染者の後方に座っていた人、4.5メートル離れて座っていた人が感染し、さらには感染者が下車した30分後に乗ってきた人までもが感染していたことが報告され、飛沫感染だけでなく物質感染、空気感染も起こりうる可能性が指摘され、どれだけこれから感染が広がるのだろうかという当時の不安をさらにあおるようにニュースとなりました。

この報告でも一つ目の論文と同じように隣に座った乗客の方は感染が確認されていません。

 

 

 

飛行機内の空気循環の仕組み

 

密室から逃れられない状況の一つに一度搭乗して離陸したらすぐに降りられない飛行機があります。

感染者が咳やくしゃみをすることによる飛沫感染はマスクやボードによるシールドが検討されています。いっそう狭く窮屈にならない設計が望まれます。

 

また空気感染に対する対策はどうでしょうか?

実は飛行機のキャビン内は外からのきれいな空気を取り入れながら、ウイルスを含む内部の空気の汚れを床下にあるフィルターで捕集しきれいな空気を循環させています。

 

 

まずキャビン内には天井のエアコンダクトから空気が入ってきて、そして両側の床下にある空気孔へ流れていきます(右上図)。

キャビン内の空気は滞留することなく約3分間で入れ替わります。空気が流れていることが重要です。

床下へ流れてきた空気は一部機外へ排出され、残った空気はHEPAフィルターを通して浄化されます。

HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter) は0.3μm の粒子を99.7%捕集し、6000時間の運航に耐えられます。機内のホコリや空気の汚れをきれいにする高い空気清浄能を持つ高性能フィルターです。そういえば機内であまり埃っぽいと感じたことがないのはこの空気循環システムのおかげかもしれません。

フィルターを通過したきれいな空気は機外の空気を取り入れながら再びエアコンダクトに入りキャビン内に入っていきます。

ということで機内では空気感染が起こりにくいように工夫がしてあります。

 

 

 

ソウルビジネス街にあるオフィスビル内でのクラスター報告

 

2020年2月から3月にかけて韓国ソウル市内のオフィスビル内で新型コロナウイルス感染のクラスターが発生しました。

ビルの勤務者、住人、感染者の家族のPCR検査を行い結果を報告しています。

 

Coronavirus Outbreak in Call Center, South Korea

https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/8/20-1274_article

 

 

この報告の驚く点は感染者が11階フロアのコールセンターに集中しているということです。

密な空間の中で声を出すことがいかにウイルスを拡散させるかあらためて思い知らされます。その割合は216名の勤務者中94名が感染しておりattack rate (罹患率) は 43.5%に及びます。

上図の11階フロアの見取り図から見ると上の区画に関してはもっと罹患率が高いと考えられます。

家族への2次感染は225名中34名、罹患率16.5%です。感染報告やビル閉鎖などのテキストメールがまわってきて各家庭で用心していたのにも関わらず高い罹患率です。

 

 

 

無症候性病原体保有者からの感染の報告

 

無症候性病原体保有者とは感染しているけど症状が出ていない方です。

2020年4月に米国の亜急性期施設から無症候性病原体保有者からの感染に関する論文報告がありました。

Presymptomatic SARS-CoV-2 Infections and Transmission in a Skilled Nursing Facility  DOI: 10.1056/NEJMoa2008457

 

その施設には 89名が入所しており、一人のコロナウイルス感染が起きたため一斉にPCR検査と症状確認を行いました。するとPCR検査陽性でその時点でまだ症状が出てなかったかたが24名おり(うち17名がのちに症状が出ることになるわけですが)、症状が出る前の時期からにすでにウイルスを排出していたことがわかりました。不顕性感染者(感染しているけど結局症状が全く出なかった方)からのウイルスの排出もみられています(左点線下)。

また時期を見ると発症の1週間前からすでにウイルスを排出していた人がいたこともわかりました。

この施設内では 57名にコロナウイルス感染が起こり平均3.4日で感染者数が倍増し(市中は5.5日)、うち15名がお亡くなりになりました。

発症する前の時期に他者にうつすことで拡大が急速に広がった施設内感染を報告しています。

 

 

 

 

新型コロナウイルス感染症におけるウイルス排出期間と排出部位

前項でこのコロナウイルスは発症する 1週間前からウイルスを排出していることに触れました。

ウイルスの排出がいつまで続くのか?

そして

体のどの部位からウイルスは排出されていくのか?

この問題も重要でありその手掛かりとなる論文をみていきましょう。

 

Evaluation of SARS-CoV-2 RNA Shedding in Clinical Specimens and Clinical Characteristics of 10 Patients With COVID-19 in Macau

DOI: 10.7150/ijbs.45357

 

マカオの病院で新型コロナウイルス感染症にかかった10名の患者さんに対して上咽頭、尿、便からPCR検査をこまめにしています。その10名の方々はみなさん人工呼吸器を必要としない状態でした。

 

 

 

上図上の2番目の患者さん (Patient 2) をみてみると発症から24日後においても上咽頭から陽性です。その間に上咽頭と便は一旦陰性となりますが、再び陽性となっています。これは体からウイルスが一旦消えてまた出現したというよりも、ウイルスが少なくなっていく中での検査感度の問題、手技的な問題が関係していると考えられます。

上図中の4番目の患者さん(Patient 4) では上咽頭が11日目に陰性化しています。その後も上咽頭からはずっと陰性が続いていますが14日目から便が陽性になってきています。つまり上咽頭から排出がなくなっても便から排出が続く可能性があります。

上図下の5番目の患者さん (Patient 5) は最初に喀痰のPCR検査が陽性で診断されました。発症してから5日目に便から最初に陽性が出ています。咽頭から最初に検出されたのは9日目です。便から先に陽性となるパターンです。

10人とも尿からは陰性でした。

 

まとめますと

PCR 法を利用した新型コロナウイルスの検出と消失確認に関して

上咽頭から先に陽性になるパターン、便から先に陽性になるパターンがある。

・消失も同様に上咽頭から消失するパターンと便から消失するパターンがある。つまり上咽頭が消失しても便からウイルスを排出し続けていることもあることに注意を要する。

・尿での PCR法による診断は適さない

・消失していく時期においては感度や手技上の問題で一旦陰性化しても再び陽性になることがあり、一回の陰性結果だけでは断定できないことがあり注意を要する。

かかった方がウイルスをいつまで排出するのか正確に把握するためには上記の様々なパターンを考慮して上咽頭と便の両方からみていかないといけないのかもしれません。

 

今後解明したい点として

・便から感染が拡大する例がどのくらいあるのか? 

・感染者の排便後にトイレ室内での空気感染が起こりうるか?

もし便から感染が拡大していくことがあれば集団生活において手を洗うだけでなく、トイレ周りやドアノブなどの除菌や換気も大切になってきます。

 

 

次の論文はミャンマーと接する中国江西省 Xiangtan からの報告ですが、体のどの部位からウイルスが排出され続けるのかを重症者と非重症者とでみたものです。

Comparisons of Viral Shedding Time of SARS-CoV-2 of Different Samples in ICU and non-ICU Patients

DOI: 10.1016/j.jinf.2020.03.013

 

 

一般病棟8名、集中治療室24名から鼻腔、血液、唾液の部位別にウイルスの排出期間をみています。

集中治療室での治療ということですから一般病棟のかたより重症と考えていいでしょう。ウイルス排出期間は集中治療室群の方が一般病棟群より長く、とくに鼻腔からは平均 22.25±3.62日排出され続けており、一般病棟群 (15.67±6.68) より有意に長く排出されていました。両群とも鼻腔からが最も長く排出され、唾液、血液の順です。

 

 

令和2年5月17日 タカラバイオ株式会社より唾液を用いたPCR検査試薬発売の報道がありました。上記の論文からも唾液からのウイルス排出期間は鼻腔に次いで長く非重症者で13.33±5.27日、重症者で16.50±6.19日です。
何よりも唾液検査のメリットは自分自身でできること、そして鼻腔からの検査のように検査時にくしゃみや咳がでないことにより検査者を感染リスクにさらさないことです。

 

 

 

新型コロナウイルスにかかったらいつまで感染力が持続するのか? PCR法とのギャップ

新型コロナウイルスに感染した時にいつまで他人にうつす感染力があるのかみていきましょう。

 

コロナウイルスに感染すると体からウイルスの排出がみられます。気管、上咽頭、鼻腔、便などからです。PCR法 (Polymerase Chain Reaction) で検査すると排出期間は発症から約 2か月に及ぶことがあります。ただしPCR法は遺伝子を転写、増幅させた産物をみているだけで感染性をみているものではないという意見があります。

 

 

感染後に2か月間排出物からPCR陽性が検出されて、もし感染性が発症から1週間後までしかなかったとしたら、2か月間の隔離は不要なものとなり、PCR 検査陰性を2回確認してから社会復帰するという手間も必要なくなります。

 

新型コロナウイルス感染後の感染性について示唆する2つの論文を紹介します。

一つ目は初感染者と接した濃厚接触者を丁寧に検査した台湾からの報告です。

 

Contact Tracing Assessment of COVID-19 Transmission Dynamics in Taiwan and Risk at Different Exposure Periods Before and After Symptom Onset

DOI: 10.1001/jamainternmed.2020.2020 

 

 

感染者と濃厚に接触した2761名を調べたところ 22名が陽性でした。その22名は全員初感染者 ( index case ) が発症してから5日以内に接触していました。発症して6日目以降に接触した人たちは全員うつらなかったのです。

つまりPCR法で2か月近く検出されているウイルスは実は発症から6日以上経てば他人にうつす感染性はなくなるのではないかということを示しています。

 

次の論文は新型コロナウイルスに感染した 90 例に対してウイルス培養とPCR法によるCt 値を測定しています。そして合わせて発症日からの日数を記録しています。

 

Predicting infectious SARS-CoV-2 from diagnostic samples

DOI: 10.1093/cid/ciaa638

 

 

この論文では新型コロナウイルス感染 90例中 26例がウイルス培養が陽性になりました。この培養陽性例はすべて発症から7日以内に検査したものでした。つまり発症から8日以降にウイルスを培養しても陽性にはならなかったのです。

 

上記の2つの論文からこの新型コロナウイルスが人にうつす感染性を持つのは発症から1週間前後ではないかということが推測されます。ただ限られた数の検査例ですので早急な判断をすることなくこれからのさらなる解明を待ちたいところです。

 

2つ目の論文では PCR 法によるCt 値を計測しています。

Ct 値とは何かを理解するためにここで簡単にコロナウイルスのPCR検査の行程とその解釈について触れてみます。

 

 

上図にありますようにまず鼻腔を通り抜けた上咽頭や唾液などから検体を採取します。

コロナウイルスは1本鎖のRNAという遺伝子情報を持ったウイルスで、ウイルスの中にあるRNAを抽出します。

そして PCR検査で増幅できるように一本鎖RNAを 2本鎖DNAに変換します。

あとはこの変換した DNAを PCRの機械にかけて増幅させていきます。1対が 2対に、そして 2対が 4対にという具合にDNAが増えていきます。

ウイルス量が多ければ短いサイクルで閾値(基準ライン)を超えてきます。このサイクルの数をCt 値 ( Cycle threshold values ) と言います。

おおまかに Ct値が低いとウイルス量が多いと推定できます。ウイルスがなければ40サイクルを繰り返してもラインを越えてきません。Ct 値が40 を超えると陰性としています。

2つ目の論文ではウイルス培養陽性例はすべてCt 値が24未満であったことを報告しています。つまり培養陽性例ではウイルス量が多いことが推測されます。

 

感染力が発症からいつまで続くかに関して、もしかしたら我々が想像していた以上に短いのかもしれません。これからのさらなる知見の集積が真実を明らかにしていくと思います。

 

 

 

温度、湿度がコロナウイルスに与える影響について

 

コロナウイルスと温度の関係

ウイルスは基本的に煮沸で死滅します。台所など煮沸消毒できる場所には有効です。一方このウイルスは低温には強いようです。冷蔵庫4℃の中で20度の室温と比較してウイルスの活性はなかなか落ちず、3週間プラスチック上で活性を保っていた報告があります。

気温に関してはどうでしょうか?

中国都市における気温とコロナウイルスの流行を見た論文(Temperature significant change COVID-19 Transmission in 429 cities. Mao Wang et al)では気温が低くなると流行が多くなるという報告です。

また今までのコロナウイルスは20より30の方が早く消失すること、室温で最大9日間存在していることが報告されています(下図右)。東南アジアでは冷房を使用せず窓を開けて室温を上げるようにとりくんでいる国もあります。気温との関連はこれから疫学統計をみていく必要があります。

 

 

コロナウイルスと湿度の関係

今までウイルスは湿度に弱いのではないかと考えられてきました。1985年に報告された従来のコロナウイルスと湿度の関連に関する論文(下図左)では、気温20℃においてコロナウイルスが早く消失するのは湿度80%、20%、50%の順です。

徹底的に80%以上に湿度を高めたほうが良いのか?それとも極端に20%以下に低くしたほうが良いのか地理的条件、季節などを考慮すると判断が難しいところです。

この数年のインフルエンザウイルスの流行をみると特に赤道周囲の暖かい湿度の高い国々において通年性に流行が見られており、我が国における新型コロナウイルス感染症が高湿度の梅雨や夏季にも続くのか注視していかなければいけません。

何よりも閉鎖空間で対人2メートル以内にいることを避けることがまず大切です。

 

 

 

おわりに

我々の生命や経済を脅かしかねない今回の新型コロナウイルス感染症ですが、これから分かってくる色々なことを参考にしながら我々は生き延びていかないといけないと思います。内心心配になっている方も多いと思いますが、我々が積み重ねてきた科学を信じてこのウイルスのことをよく知り適切に対応し乗り越えて新しい明るい時代を築いていきたいものです。この投稿が皆様が健康で安心して生活していただくための一助になれば幸いです。

 

文責 植村 健 http://www.koseikai-uemura.jp/

 

以下もご関心ありましたらご参照ください。

http://ko-island.yokatoko.com/pr/uemura/2020/05/03/コロナウイルスの症状と診断について/

http://ko-island.yokatoko.com/pr/uemura/2020/05/02/コロナウイルスにかからないようにするために/

http://ko-island.yokatoko.com/pr/uemura/2020/05/01/コロナウイルスに対する治療の試み/

 

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