この章ではウイルスの存在する場所と時間、ウイルスの排出期間と部位、マスクの効果、紫外線、光触媒、オゾンのウイルス不活化作用、ハイターの具体的な調合、免疫をあげるための日常生活の工夫、体温の計測法について触れています。
コロナウイルスにかからないようにするには
①ウイルスに触れる機会を少なくすること
②衛生、消毒を心がけること
③自分自身の体調を管理し免疫をあげること
が大切です。
少し長いですが以下に項目別に記載していますのでご参考にしてください。
①ウイルスに触れる機会を少なくすること
ウイルスは見えないのでどこにいるかわかりません。
ⓐ ウイルスをだれが排出しているか?
ⓑ ウイルスはどこにいるのか?
を知ることが肝要です。
①ⓐウイルスをだれが、どのくらいの期間、どの部位からから排出しているのか?
コロナウイルスは発症する前からウイルスを排出している、しかも発症する1週間前からウイルスを排出して気づかないうちにあっという間に感染が広がることが報告されています。
感染してから発症するまでの潜伏期のあいだは一見体調に変わりない人でも排出している可能性があります。自分が住む地域の流行状況をモニタリングしながら備えましょう。
無症候性病原体保有者からの感染の報告
2020年4月米国の亜急性期施設(急性期病院からの転出施設)における無症候性病原体保有者からの感染に関する論文報告がありました。
Presymptomatic SARS-CoV-2 Infections and Transmission in a Skilled Nursing Facility DOI: 10.1056/NEJMoa2008457
この施設では 89名が入所しており、一人のコロナウイルス感染が起きたため一斉にPCR検査と症状確認を行いました。するとPCR検査陽性でその時点でまだ症状が出てなかったかたが24名おり(うち17名がのちに症状が出ることになるわけですが)、症状が出る前の時期からにすでにウイルスを排出していたことがわかりました。また時期を見ると発症の1週間前からすでにウイルスを排出していた人がいたこともわかりました。
この施設内では57名にコロナウイルス感染が起こり平均3.4日で感染者数が倍増し(市中は5.5日)、うち15名がお亡くなりになりました。
発症する前の時期に他者にうつすことで拡大が急速に広がった施設内感染を報告しています。
新型コロナウイルス感染症におけるウイルス排出期間と排出部位
前項でこのコロナウイルスは発症する 1週間前からウイルスを排出していることに触れました。
ウイルスの排出がいつまで続くのか?
そして
体のどの部位からウイルスは排出されていくのか?
この問題も重要でありその手掛かりとなる論文をみていきましょう。
Evaluation of SARS-CoV-2 RNA Shedding in Clinical Specimens and Clinical Characteristics of 10 Patients With COVID-19 in Macau
DOI: 10.7150/ijbs.45357
マカオの病院で新型コロナウイルス感染症にかかった10名の患者さんに対して上咽頭、尿、便からPCR検査をこまめにしています。その10名の方々はみなさん人工呼吸器を必要としない状態でした。
2番目の患者さん (Patient 2) をみてみると発症から24日後においても上咽頭から陽性です。その間に上咽頭と便は一旦陰性となりますが、再び陽性となっています。これは体からウイルスが一旦消えてまた出現したというよりも、ウイルスが少なくなっていく中での検査感度の問題、手技的な問題が関係していると考えられます。
4番目の患者さん(Patient 4) では上咽頭が11日目に陰性化しています。その後も上咽頭からはずっと陰性が続いていますが14日目から便が陽性になってきています。つまり上咽頭から排出がなくなっても便から排出が続く可能性があります。
5番目の患者さん (Patient 5) は最初に喀痰のPCR検査が陽性で診断されました。発症してから5日目に便から最初に陽性が出ています。咽頭から最初に検出されたのは9日目です。便から先に陽性となるパターンです。
10人とも尿からは陰性でした。
まとめますと
PCR 法を利用した新型コロナウイルスの検出と消失確認に関して
・上咽頭から先に陽性になるパターン、便から先に陽性になるパターンがある。
・消失も同様に上咽頭から消失するパターンと便から消失するパターンがある。つまり上咽頭が消失しても便からウイルスを排出し続けていることもあることに注意を要する。
・尿での PCR法による診断は適さない
・消失していく時期においては感度や手技上の問題で一旦陰性化しても再び陽性になることがあり、一回の陰性結果だけでは断定できないことがあり注意を要する。
かかった方がウイルスをいつまで排出するのか正確に把握するためには上記の様々なパターンを考慮して上咽頭と便の両方からみていかないといけないのかもしれません。
今後解明したい点として
・便から感染が拡大する例がどのくらいあるのか?
・感染者の排便後にトイレ室内での空気感染が起こりうるか?
もし便から感染が拡大していくことがあれば集団生活において手を洗うだけでなく、トイレ周りやドアノブなどの除菌や換気も大切になってきます。
次の論文はミャンマーと接する中国江西省 Xiangtan からの報告ですが、体のどの部位からウイルスが排出され続けるのかを重症者と非重症者とでみたものです。
Comparisons of Viral Shedding Time of SARS-CoV-2 of Different Samples in ICU and non-ICU Patients
DOI: 10.1016/j.jinf.2020.03.013
一般病棟8名、集中治療室24名から鼻腔、血液、唾液の部位別にウイルスの排出期間をみています。
集中治療室での治療ということですから一般病棟のかたより重症と考えていいでしょう。ウイルス排出期間は集中治療室群の方が一般病棟群より長く、とくに鼻腔からは平均 22.25±3.62日排出され続けており、一般病棟群 (15.67±6.68) より有意に長く排出されていました。
両群とも鼻腔からが最も長く排出され、唾液、血液の順です。
令和2年5月17日 タカラバイオ株式会社より唾液を用いたPCR検査試薬発売の報道がありました。上記の論文からも唾液からのウイルス排出期間は鼻腔に次いで長く非重症者で13.33±5.27日、重症者で16.50±6.19日です。
何よりも唾液検査のメリットは自分自身でできること、そして鼻腔からの検査のように検査時にくしゃみや咳がでないことにより検査者を感染リスクにさらさないことです。
新型コロナウイルスにかかったらいつまで感染力が続くのか? PCR法とのギャップ
新型コロナウイルスに感染した時にいつまで他人にうつす感染力があるのかみていきましょう。
コロナウイルスに感染すると体からウイルスの排出がみられます。気管、上咽頭、鼻腔、便などからです。PCR法 (Polymerase Chain Reaction) で検査すると排出期間は発症から約 2か月に及ぶことがあります。ただしPCR法は遺伝子を転写、増幅させた産物をみているだけで感染性をみているものではないという意見があります。
感染後に2か月間排出物からPCR陽性が検出されて、もし感染性が発症から1週間後までしかなかったとしたら、2か月間の隔離は不要なものとなり、PCR 検査陰性を2回確認してから社会復帰するという手間も必要なくなります。
新型コロナウイルス感染後の感染性について示唆する2つの論文を紹介します。
一つ目は初感染者と接した濃厚接触者を丁寧に検査した台湾からの報告です。
Contact Tracing Assessment of COVID-19 Transmission Dynamics in Taiwan and Risk at Different Exposure Periods Before and After Symptom Onset
DOI: 10.1001/jamainternmed.2020.2020
感染者と濃厚に接触した2761名を調べたところ 22名が陽性でした。その22名は全員初感染者 ( index case ) が発症してから5日以内に接触していました。発症して6日目以降に接触した人たちは全員うつらなかったのです。
つまりPCR法で2か月近く検出されているウイルスは実は発症から6日以上経てば他人にうつす感染性はなくなるのではないかということを示しています。
次の論文は新型コロナウイルスに感染した 90 例に対してウイルス培養とPCR法によるCt 値を測定しています。そして合わせて発症日からの日数を記録しています。
Predicting infectious SARS-CoV-2 from diagnostic samples
DOI: 10.1093/cid/ciaa638
この論文では新型コロナウイルス感染 90例中 26例がウイルス培養が陽性になりました。この培養陽性例はすべて発症から7日以内に検査したものでした。つまり発症から8日以降にウイルスを培養しても陽性にはならなかったのです。
上記の2つの論文からこの新型コロナウイルスが人にうつす感染性を持つのは発症から1週間前後ではないかということが推測されます。ただ限られた数の検査例ですので早急な判断をすることなくこれからのさらなる解明を待ちたいところです。
2つ目の論文では PCR 法によるCt 値を計測しています。
Ct 値とは何かを理解するためにここで簡単にコロナウイルスのPCR検査の行程とその解釈について触れてみます。
上図にありますようにまず鼻腔を通り抜けた上咽頭や唾液などから検体を採取します。
コロナウイルスは1本鎖のRNAという遺伝子情報を持ったウイルスで、ウイルスの中にあるRNAを抽出します。
そして PCR検査で増幅できるように一本鎖RNAを 2本鎖DNAに変換します。
あとはこの変換した DNAを PCRの機械にかけて増幅させていきます。1対が2対に、そして2対が4対にという具合にDNAが増えていきます。
ウイルス量が多ければ短いサイクルで閾値(基準ライン)を超えてきます。このサイクルの数をCt 値 ( Cycle threshold values ) と言います。
おおまかに Ct値が低いとウイルス量が多いと推定できます。ウイルスがなければ40サイクルを繰り返してもラインを越えてきません。Ct 値が40 を超えると陰性としています。
2つ目の論文ではウイルス培養陽性例はすべてCt 値が24未満であったことを報告しています。つまり培養陽性例ではウイルス量が多いことが推測されます。
感染力が発症からいつまで続くかに関してもしかしたら我々が想像していた以上に短いのかもしれません。これからのさらなる知見の集積が真実を明らかにしていくと思います。
①ⓑ ウイルスはどこにいるのか?
飛沫感染ルートと同様に物質表面から感染するルート (fomite infection) も重要と考えられています。
Detection of Air and Surface Contamination by Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) in Hospital Rooms of Infected Patients doi: https://doi.org/10.1101/2020.03.29.20046557
この論文では感染した患者さんの病室のウイルスを調べています。
床、ベッドの横板、ロッカーの取っ手、ベッドサイドテーブル、リモコン、椅子、トイレの便座と取っ手、換気扇など多くの個所に検出されています。やはり人の手で触れるところが目立ちますが、軽視できないのは床、すなわち靴底について運んでしまうことに注意を要します。また換気扇にもみられることから今後空調における除菌も大切になってくると思います。
最初の1週間は多くウイルスが検出されています。2週以降はウイルスが少なくなっています。しかしながらこの少ないウイルス量でどれほどの感染力を持っているのか今後はっきりと解明したい点です。
またこのウイルスが物質上でどのくらい存在するかということに関して、物からの感染 (fomite infection)は
銅の表面で4時間、
段ボールで24時間、
ステンレスで48時間、
プラスティックで72時間生存していると報告されています。
微小飛沫感染は室内で3時間存在しています。
② 衛生とウイルスの消毒について
手洗いは頻回に行ってください。アメリカCNN放送のコメンテーターであり脳外科医でもあるSanjay Guputa 氏が手洗いのコツを伝えています。手のひらだけでなく手背と親指も洗うこと、紙ペーパーの使い方にも手に感染させない工夫がみられます。1分弱の動画をリンクします。
うがいや鼻洗浄も有効と思われます。うがいをする際は薬剤を濃く用いるとかえって粘膜障害を来すことがありますのでご注意ください。
マスクの効果を考えさせられる相反する 2つの論文
マスクがウイルスを吸着させるメカニズムは以下の4つにあるとされています。①慣性衝突 (inertial impaction)、②直接捕集 (interception)、③拡散 (diffusion)、④静電引力 (electrostatic attraction)です。
マスクの効果は
① 感染者がウイルスのついた飛沫を飛ばさないこと
② 鼻やのどのなどの上気道の湿度を保ち粘膜の防御システムを維持すること
③ マスクをすることによって鼻や口を直接触る機会が少なくなること
などが挙げられます。ウイルスは粒子が小さいため一般的なマスクは通過してしまいます。マスクをすることでどれだけのウイルスの侵入を防げるかはまだよくわかっていませんがここが多くの皆さんが知りたいところです。
感染者がマスクをすることはとても重要と考えられています。その根拠となった一つ目の論文を紹介します。
咳やくしゃみをする感染者がマスクをすることでウイルスを飛沫やエアロゾールの形で周囲に飛ばさない(赤点線)ことを示しています。
Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks
DOI https://doi.org/10.1038/s41591-020-0843-2
前述したように発症する前からウイルスを放出していることが分かっています。自分は症状はないけれどももしかして潜伏期でウイルスを排出しているかもしれない。外出するときはマスクをする。そのことで周りの人に感染をひろげないというマスクエチケットも大切な考えだと思います。
もう一つの論文を紹介します。この論文は韓国から発表されました。
Effectiveness of Surgical and Cotton Masks in Blocking SARS-CoV-2: A Controlled Comparison in 4 Patients
DOI: 10.7326/M20-1342
新型コロナウイルス感染者4名にサージカルマスクをした状態とコットンマスクをした状態でそれぞれ咳を5回ずつさせて20㎝離れたシャーレとマスクの外側、内側のウイルス量を測定しています。
結果です。
サージカルマスクやコットンマスクをしていても20㎝先にウイルスを拡散させてしまうというもので先程の論文と結果が異なっています。またマスクの内側よりも外側のほうがウイルスが存在しているというものでした。
マスクの外側にウイルスが存在しているということであればマスクを触れた際はかえってウイルスを手に付けて広げてしまうので、マスクを触れたらすぐに手洗いをしたほうが良いということになります。マスクを触らないということも大切になってきます。
眼鏡をおかけの方も眼鏡をさわることがありまめに洗浄するといいと思います。
N95仕様マスクを使用する際はしっかりと顔面に漏れがないように密着させてください。ちなみにN95マスクとは0.5㎛の微粒子を95%以上捕集できるマスクのことです。N95マスクの再利用に関してアルコール噴霧消毒はウイルスの捕集、吸着能力を低下させるとの報告もあります。
またマスク素材の面からナノファイバー技術を用いてウイルスを通さないマスクも開発されてきています(ヤマシンフィルター株式会社が建機用オイルフィルターから応用して作製しています)。
下記に触れています光触媒繊維を用いたマスクも発売されていますが有効性が議論されているところです。
ハムスターを用いた新型コロナウイルスに対するマスク効果
(マスクをすることで人にうつさない、自分もかからない)
新型コロナウイルスに対するマスクの効果を正確に調べるためにはできるだけバイアスが少なく公平になるようなランダム化比較試験 (Randomized controlled Trial)を行うことが望ましいとされています。
しかしながら この感染に対してマスクをする群、しない群と無作為に割り当てて検査を進めていくことは倫理的に難しい面があります。
そこで香港大学からハムスターを用いて人間がマスクをすることに見立てた報告がありましたので紹介します。
感染ハムスターがマスクをした場合(感染者がマスクをする)、健常ハムスターがマスクをした場合(健常者がマスクをする)の感染の広がりを調べています。
Surgical Mask Partition Reduces the Risk of Non-Contact Transmission in a Golden Syrian Hamster Model for Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)
この論文では感染ハムスターのケージと健常ハムスターのケージを隣り合わせに置き、通気孔にマスクを取り付けて感染の状況をみています。ケージは別々なので接触感染はなく、呼吸器飛沫感染、空気感染が想定されます。
コロナウイルスの感染の有無は症状、ウイルスの培養、組織学的所見から診断しています。
結果です。
まず① 感染ハムスター、健常ハムスター両方ともマスクをしない場合は 1週間以内に健常ハムスターの66.7%に感染が認められました。
次に② 感染ハムスターにマスクをした場合、健常ハムスターの16.7%に感染が見られました。
③ 今度は健常ハムスターにマスクをした場合、健常ハムスターの 33%に感染が認められました。
つまりマスクの基本的な考えの中にマスクをすることで他人を感染させない(an act of altruism)ことがありますが実験 ②がそれを示しています。感染者がマスクをすることで感染率を66.7%から16.7%にまで押し下げているのです。
それだけでなく実験 ③から言えることは健常ハムスターがマスクをしない状況では感染率は 66.7%ですが、健常ハムスターがマスクをすることによって感染率を 33.3 %に減らしています。マスクをすることで自分自身が感染するリスクを減らせることを示しています。
免疫を高めるために
免疫を急に高めることはむずかしいことです。栄養をよく摂取し休息を多めに取り適度に体を動かすことが基本です。家にいて近くばかりみているかたは時に遠くの緑などを見てリラックスしてください。
以下に挙げることを参考にしていただければと思いますが、度が過ぎてもいけないところもありますのでご注意ください。
自然食品 コロナウイルスは高血圧でも知られているACE2(Angiotensin Converting Enzyme 2) という酵素を介して体内に広がることが分かっています。細胞内に侵入したコロナウイルスはACE2の発現や活性を弱めます。すると一連の血圧を調整しているレニンアンギオテンシン系に影響して急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や心筋障害(心不全)に関与すると言われています。
味噌がACE2が関与するレニンアンギオテンシン系の亢進を抑えるという研究報告があります。特に米や麦味噌よりも大豆味噌が、熟成させたものよりもより新しいほうが、大豆の子葉よりも胚軸からのほうがより抑える働きが強いとの報告があります。
ブロッコリーから抽出したブロリコ、メカブから抽出したメカブフコダイン、ハラタケ属キノコから抽出したアガリスク、アサイーなども免疫を高めることが期待されますが免疫系はより複雑でありそう摂取したから簡単に上げられるものではないようです。
血圧に関与するACE2の話が出ましたのでこれと関連して降圧薬を内服している方が感染したときに内服を続けるべきか、中止すべきかとの議論があります。
理論上はACE阻害薬やARB薬という系統の降圧薬はレニンアンギオテンシン系をコントロールしているので肺障害や心筋障害を起こさないように守っている役割があります。よって内服中の方がもしコロナウイルス感染症にかかっても降圧薬は急に中止しないほうがよいとされています。
ACE阻害薬であるキナプリルquinapril(商標名コナン)はコロナウイルス感染症の治療薬として治験されており結果を待ちたいところです。
果物や野菜などビタミンをはじめとしてバランスよく栄養をしっかりと摂ってください。
亜鉛に関しては肉、卵、チーズ、ココアなどに入っており、普通のバランスのとれた食事で十分です。また食品添加物は亜鉛の吸収を妨げ、アルコールは亜鉛を排出させます。また亜鉛の過剰摂取は前立腺肥大をもたらすと言われています。
睡眠を十分とりストレスを少なくしてください
運動も適度に行うことで免疫機能が高まることが知られています。周りに人がいない屋外で、疲れない程度に行ってください。
禁煙 に努めてください。呼吸器感染を増悪させる要因の一つです。
自分の体温を知ろう
体温は1日のうちでも約1℃の変動があり、夜明け前あたりが最も低く、午後から夕方にかけて高くなってきます。若年者のほうが高齢者より変動が大きいとの報告もあります。
感染症法では、37.5℃以上を「発熱」、38.0℃以上を「高熱」に分類していますが個人差がありますので平熱が高く、周りから気にされているかたはご自身の体温を計測しその変化と標準偏差を知っておくとより良い説明ができるかもしれません。
下記に標準偏差を利用した体温の把握方法を記載します。
同じ時間帯でできるだけ同じコンディションで毎日の体温を計測すると良いでしょう。食後は体温が高くなりがちなので食前が良いと思います。
体温を計測してその数字を積み重ねていくと平均値 AVGと標準偏差 SD(ばらつきの目安)を知ることができます。正規分布が応用できるとすれば AVG ±SDにデータの68%が入り(右表)、AVG±2SDに96%が入るとされるのでAVG+2SD を越えたらいつもと違う状態だという目安になるでしょう。
ご自身の体温の標準偏差を求めるにあたってここでは簡単に5日間の出勤前の体温が 36.4, 36.8, 37.0, 36.0, 35.8℃を例に計算してみましょう。
5日間の平均は(36.4+36.8+ 37.0+ 36.0+ 35.8 )÷5= 36.4℃です。
分散は【(36.4-36.4)2+(36.8-36.4)2+(37.0-36.4)2+(36.0-36.4)2+(35.8-36.4)2】÷5 = 1.04÷5 = 0.208となります。
標準偏差SDはその平方根ですので√o.208 = 0.456 と求まります。
よって体温が36.48 (AVG) ± 0.456 (SD) の範囲でおさまっていれば平常と考えて良く、また36.4 ±0.912 (2SD) を逸脱するとつまり37.312度(表示では37.4℃になります)を超えるとその方にとって異常な体温と言えるかもしれません。
非接触型体温計について
また職場の検温では便利さもあって赤外線を用いた非接触型体温計がよく用いられます。
手早くそして触れずに計測できることは大きなメリットです。
ただし皮膚表面の温度を計測しており外気温の影響や汗による影響などばらつきが大きくなることに注意が必要です。
もし異常値が出たら腋窩などで再検してみて下さい。
下記の小児救急現場から報告された論文では深部体温と非接触型で計測した温度との比較が出ていますが深部体温とばらつきが出る場合があり注意を要します(額からの非接触型温度データにおいて深部体温を反映する直腸温と比較して1,96SD以上の乖離したデータが散見された。赤丸点線群)。
また前額部より頸動脈あたりの首にあてた方が深部体温との誤差が少ないことも報告されています。
ウイルス除去剤
次亜塩素酸 薄めた商品名ハイターによる床拭きはウイルス除去に有効との考えがあります。次亜塩素酸を使用する際はお部屋の換気をして手荒れ、他の薬剤を混合しないように気をつけてください。次亜塩素酸に関しては0.1%(=1000ppm) 濃度にて1分でコロナウイルスが消失する報告があります。下記にキッチンハイターでの作り方を示しました。
微酸性電解水も次亜塩素酸を用いたものでありpH5-6.5( 中性は7)で有効塩素濃度10-30ppm にしてあります。より安全にそしてより効果的に作られた食品添加物ですが、飲用ではありません。
花王のホームページからハイターやキッチンハイターによる次亜塩素酸液の希釈の目安が掲載されていますので転記させてください。日にちが経つと濃度が低下していくことに注意が必要です。
二酸化塩素 一定の抗ウイルス効果が期待されていますが、湿度30%以下の低湿度環境下ではウイルスを抑え込めないとの指摘があります。人体の健康には影響しないと言われています。
アルコール製剤 コロナウイルスはエンベロープ(被膜)をもつウイルスでアルコールにより不活化します。商品名ノロスターは弱酸性の食品添加物であり、アルコールに硫酸マグネシウムを足すことでコロナウイルスを除去することが期待されています。
空気清浄機 原理は放電したイオンや電子を放出して浮遊するウイルスに付着して死滅させるものです。3時間漂うとされる微小飛沫に対しては有効な可能性がありますがこれだけで感染をすべて予防できるものではないことに注意が必要です。
紫外線によるウイルス不活化作用
紫外線のなかでも200nmから280nmの波長をもつUV-C には殺菌作用(空気殺菌、水殺菌)や脱臭作用があることが知られています。
自動車機器製品等を製造しているスタンレー電気株式会社からより効率的にUV-Cを発する冷陰極管が発売されておりコロナウイルスの不活化に応用できないか注目されています。
また塩素と同時に紫外線を当てるよりも塩素でたたいた後に紫外線をあてる方がウイルス(この実験では塩素単独では効きにくいMS2ウイルスを用いています)を不活化させる作用が大きいとの論文報告があります(下図②)。
光触媒による抗ウイルス効果
酸化チタンは化粧品や日焼け止め、壁の染料として幅広く用いられています。酸化チタンは光触媒作用をもっており脱臭や抗菌作用を持つことが知られています。
酸化チタンが光をうけると電子が放出されその際に活性酸素のひとつであるOHラジカル(-OH)ができます。このOHラジカルがウイルスの被膜を破りウイルスを不活化させるという仕組みです(下図上)。
ロシアからはこの酸化チタンがウイルスを不活化させる報告があり電子顕微鏡でその様子をとらえています(下図中)。
酸化チタンの抗ウイルス効果が期待される一方で酸化チタンを使用するにあたっていくつかの指摘があります。
一つは酸化チタンの光触媒は400ナノメートル以下の紫外線にしか起きないこと
もう一つは酸化チタン微粒子は用量によっては発がん性が疑われていることやサイトカインを介した肺炎の増悪が動物実験にて報告されていることです。
Titanium dioxide nanoparticles exacerbate pneumonia in respiratory syncytial virus (RSV)-infected mice. Hashiguchi S et al. DOI: 10.1016/j.etap.2015.02.017
光触媒の特性をもつ物質に酸化チタンの他にタングステンが知られています。タングステンは単独では光触媒を起こしにくいといわれていますが、白金や銅などと複合させることによって改良が加えられています。酸化チタンと異なり蛍光灯を含めた幅広い光の波長で光触媒が誘導されることが知られています。
光触媒による抗ウイルス効果に関してはまだはっきりとわかっていないことが多いですが、いろいろな研究機関や企業で試みられています。効果と安全性がこれからわかってくると思います。
オゾンによるウイルス不活化作用
2020年5月奈良県立医科大学からオゾンを用いて新型コロナウイルスを不活化させる報告がありました。
オゾンといえばオゾン層を思い浮かべる方も多いと思います。オゾン層は上空 25 ㎞あたりにある成層圏の中で最もオゾンを含んでいる層のことです。2020年3月に北半球であまりみられないオゾンホールが出現したことは記憶に新しいところです。
オゾン濃度は ppm (part per million) で表示されます。 1ppm は0.0001% に相当します。
奈良県立医科大学の資料によるとオゾン生成器を用いて 1-6ppm 約1時間でウイルスを不活化させています。
ウイルスを不活化させるメカニズム
不安定なオゾン (O3) は酸素 (O2)と酸素原子 (O) に分かれます。この分離した酸素原子が強い酸化作用をもっており、ウイルスの被膜を破壊するというものです。酸化作用はフッ素に次いで強いものです。
オゾンの半減期
オゾンの半減期(半分に減るのに要する時間)は温度、湿度、風の流れによって異なります。
40ℓシリンダー内での実験では室温24℃、湿度87%、風なしで半減期 451分、また室温 4℃、湿度 0%、風なしでは半減期 2439分 という報告があります。オゾン水になると半減期は10分から60分と少なくなります。
オゾンの毒性
オゾンによってウイルスを不活化させる報告はこれからウイルスと対峙していくにあたり参考になりますが、オゾンを使用するにあたっては濃度に気を付ける必要があります。高濃度を吸入すると呼吸器症状や時に命にかかわる状態となりえます。生成器を使用される方は部屋の広さと稼働時間を考慮しながら説明書を十分に読んでから使用してください。
おわりに
我々の生命や経済を脅かしかねない今回の新型コロナウイルス感染症ですが、これから分かってくる色々なことを参考にしながら我々は生き延びていかないといけないと思います。内心心配になっている方も多いと思いますが、我々が積み重ねてきた科学を信じてこのウイルスのことをよく知り適切に対応し乗り越えて新しい明るい時代を築いていきたいものです。この投稿が皆様が健康で安心して生活していただくための一助になれば幸いです。
文責 植村 健 http://www.koseikai-uemura.jp/
以下の項目もご関心ありましたらご参照ください。
http://ko-island.yokatoko.com/pr/uemura/2020/05/02/新型コロナウイルスの性質%e3%80%80/
http://ko-island.yokatoko.com/pr/uemura/2020/05/03/コロナウイルスの症状と診断について/
http://ko-island.yokatoko.com/pr/uemura/2020/05/01/コロナウイルスに対する治療の試み/