むくみ(浮腫)について

足のむくみ(浮腫)はよくみられる症状です。 色々な疾患で起きることが知られています。 その中には症状の軽いものから命に関わる重い病気まであります。 ここではその原因について、そして後半では重症化しうる主要な疾患について触れてみたいと思います。

 

むくみの原因

心臓から運ばれてきた酸素や栄養を多く含んだ血液は動脈を通り組織に運ばれます。 組織では動脈が無数に枝分かれし、毛細血管となり組織との間で交換が行われます。組織で使われた血液は静脈を通って心臓へ帰ります。一部はリンパ管を通っていきます。

むくみのメカニズムは細かくみれば、この組織における動脈、静脈、リンパの流れが炎症、アレルギーや圧の異常などによって漏れだすことにあります。

 

むくみを起こす疾患

 

むくみが全身に起きているのか?それとも局所や片側だけ起きているのか? は診断を正確につけるうえで重要です。 主な疾患を下記にまとめて列記します。

 

 

 

むくみのなかで気を付けるべき疾患

1、心不全

全身のむくみとともに息切れが生じた際は心臓の働きが弱り、心臓が大きくなり、胸に水が貯まる(肺うっ血)心不全が疑われます。 状態を一刻も早く調べなければいけません。

心不全の際は心不全を起こす原因が何かまでみていく必要があります。 冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、不整脈、心臓弁膜症、心筋症、甲状腺疾患、抗がん剤をはじめとした薬剤副作用などが挙げられます。

採血でBNPやNT-pro BNP といった項目をみながら心不全の診断、評価ができる時代になっています。

 

2、ネフローゼ症候群、慢性腎臓病

尿が泡立つ時、異常がないことも多いのですが、むくみが急速に起きてきた場合は検尿検査をしてください。 最近生活習慣病に潜む腎機能低下が問題となっており、みなさんがお聞きしたこともあるかもしれませんが、慢性腎臓病 (Cronic Kidney Disease) が問題となっています。 国内患者数は1330万人と推計されています。 毎年の健康診断で是非蛋白尿の出現に注意してください。

 

3、甲状腺疾患

甲状腺機能低下症によってむくみをきたす場合もあります。 疲れを伴ったり、意欲の低下が見られる時は甲状腺機能低下症を疑い、採血や超音波検査を行います。 慢性甲状腺炎(またの病名を1912年に世界で初めて論文化した橋本策先生にちなみ橋本病とも言われている)は採血で甲状腺ホルモン(遊離サイロキシンFT4)と甲状腺抗体(抗サイログロブリン抗体が最も感度が高い)を検査します。 また超音波検査で両側のびまん性腫大がみられることが特徴です。

通常の食事であれば問題ありませんが、甲状腺疾患をお持ちの方はヨードが多く含まれている昆布、海藻、ひじきの過剰摂取に気を付けてください。健康食品にも含まれていることがあります。

 

4、深部静脈血栓症

下肢静脈に生じた血栓が肺に飛んでいき、肺血栓塞栓症という命に関わる重篤な疾患を起こすことがあります。特に手術後に片側の足が腫れててきた場合には検査を要します。 また長期間カテーテルを留置している場合、悪性腫瘍が存在している場合、膠原病(特に抗リン脂質抗体症候群)、骨折などの外傷などが危険因子となります。

下肢深部静脈血栓が疑われた場合は採血とエコーでの評価が有用です。 診断面ではエコーの技術が発達し、また治療面では新しい抗凝固薬が開発されてきていることもあり、今後の早期発見と重篤化を防ぐ治療がますます期待されています。

 

 

 

 

文責 植村病院 植村 健 http://www.koseikai-uemura.jp/

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