エボラ出血熱についての基礎知識

2014年10月、西アフリカギニアに端を発した致命率の高いエボラ出血熱によって亡くなった方が4000人を超え、感染者は分かっているだけでも1万人にせまろうとしています。そして大陸を越えて拡大の兆しをみせています。 症状が出る前の潜伏期が 3週間になることもあり、早期診断が難しいために初期の対応を難しくさせています。 今後さらに世界的に感染が拡大していく懸念があり、私共もこの疾患に対して知識を持って備えておくことが大切だと感じましたので今回取り上げます。

歴史:1976年にザイールとスーダンで報告されて以来散発的に主にアフリカで起こってきました。宿主であるオオコウモリ(Pteropodidae)を食したことから人間に感染したことが考えられます。今回の感染の発端は2013年12月にギニア南部の村で最初に家族が感染したことが確認されています。今まで村部で起きては終息していたことが、今回は都市部に広がったことが拡大の原因とみられています。ギニア、シエラレオネ、リベリアでは急増する患者を収容する入院ベッドや医療従事者が不足しています。対応する医療従事者は一日に6回も防御服を着替えるとのことです。国連を中心とした世界の人的、資金的援助が今、一刻も早く必要とされています。

また西アフリカへ渡航した方、医療従事者が感染しており、現在米国、スペインで感染が確認されており、さらに拡大していく懸念があります。今のところ飛行機に同乗した他の搭乗者に感染したという報告はありません。

宿主として知られているオオコウモリの生息地の世界的北限は口永良部島だとの報告があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

症状:感染してから症状が出る前の潜伏期が2日から21日(平均8-12日)との報告があります。潜伏期を経て発熱 (87%)、全身倦怠感 (76%)、頭痛、筋肉痛、嘔気嘔吐 (68%) が出現します。さらに腹痛を伴った激しい下痢 (66%)、咳嗽時の胸痛、湿疹(発赤を伴った丘疹)、全身衰弱を認めます。致死率は71%と高く、病状が出現してから6から16日の間にみられています。

 

 

 

検査所見:白血球減少、肝機能の上昇、蛋白尿の出現がみられます。またアミラーゼ(膵酵素)の上昇は腹痛との関連が示唆されています。

治療:現在ワクチンや抗ウイルス薬が開発、治験中であり、特効薬がありません。抗インフルエンザ薬や治験薬が試みられてもいます。世界中の皆様が知識と情報を共有してできるだけ早く感染拡大の防止に取り組んでいくことが重要です。

感染形式:体液(汗、血液、下痢、精液等)を介して感染します。この疾患で亡くなった方に触れることが感染の拡大と関連していると言われています。空気感染は現在のところ確認されていませんが、今後ウイルスの変異によっては起こりうることが懸念されます。感染予防服を着ていても感染した事例があり、どのようにして感染したか感染ルートのさらなる特定が急がれます。

今後の大切な点

1. エボラウイルスに対して各国が国際プロトコールに準じて扱い、協調して迅速に動いていくこと

2. 医療従事者のトレーニング:Personal Protective Equipment (PPE 個人用防御具)の徹底、特に脱いだ後の対応

3. 日本国内で発生した際の対応:早期診断、隔離治療のシステム作り

今後日本で罹った方をどの施設でどのように受け入れ治療していくか早急な検討が必要となってきました。イギリス議会では 3週間以内に西アフリカに渡航した方に発熱、嘔吐下痢症状の疑わしい所見があれば、その地域の基幹病院で隔離して経過をみる。その間に中央センターに血液を送り診断を確定させる。もしエボラ陽性であれば中央センターに搬送し治療を行うことが議題に挙げられていました。

 

 

Médecin Sans Frontière(国境なき医師団)による現地対応施設

発症して搬送されてきた患者と、まだ重症ではないが疑わしい患者の入り口を分けて診断、治療している。

 

参考資料

BBC Ebola outbreak

WHO media centre

Harrison’s  Principles of Internal Medicine 18th edition

CDC

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