ハムスターを用いた新型コロナウイルスに関するマスクの効果  (マスクをすることで人にうつさない、自分もかからない)

 

新型コロナウイルスに対するマスクの効果を正確に調べるためにはできるだけバイアスが少なく公平になるようなランダム化比較試験 (Randomized controlled Trial)を行うことが望ましいとされています。

しかしながら この感染に対してマスクをする群、しない群と無作為に割り当てて検査を進めていくことは倫理的に難しい面があります。

 

そこで香港大学からハムスターを用いて人間がマスクをすることに見立てた報告がありましたので紹介します。

感染ハムスターがマスクをした場合(感染者がマスクをする)、健常ハムスターがマスクをした場合(健常者がマスクをする)の感染の広がりを調べています。

 

Surgical Mask Partition Reduces the Risk of Non-Contact Transmission in a Golden Syrian Hamster Model for Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)

DOI: 10.1093/cid/ciaa644

 

 

この論文では感染ハムスターのケージと健常ハムスターのケージを隣り合わせに置き、通気孔にマスクを取り付けて感染の状況をみています。ケージは別々なので接触感染はなく、呼吸器飛沫感染、空気感染が想定されます。

コロナウイルスの感染の有無は症状、ウイルスの培養、組織学的所見から診断しています。

 

結果です。

まず① 感染ハムスター、健常ハムスター両方ともマスクをしない場合は 1週間以内に健常ハムスターの66.7%に感染が認められました。

次に② 感染ハムスターにマスクをした場合、健常ハムスターの16.7%に感染が見られました。

③ 今度は健常ハムスターにマスクをした場合、健常ハムスターの 33%に感染が認められました。

つまりマスクの基本的な考えの中にマスクをすることで他人を感染させない(an act of altruism)ことがありますが実験 ②がそれを示しています。感染者がマスクをすることで感染率を66.7%から16.7%にまで押し下げているのです。

それだけでなく実験 ③から言えることは健常ハムスターがマスクをしない状況では感染率は 66.7%ですが、健常ハムスターがマスクをすることによって感染率を 33.3 %に減らしています。マスクをすることで自分自身が感染するリスクを減らせることを示しています。

 

 

 

色々な角度でマスクの効果を検証していくことが大切です。次はマスクの原理とマスクの外に漏れ出るウイルスをみた結論の異なる 2つの論文を紹介させてください。

 

マスクの効果を考えさせられる相反する 2つの論文

マスクがウイルスを吸着させるメカニズムは以下の4つにあるとされています。①慣性衝突 (inertial impaction)、②直接捕集 (interception)、③拡散 (diffusion)、④静電引力 (electrostatic attraction)です。

 

 

マスクの効果は

① 感染者がウイルスのついた飛沫を飛ばさないこと

② 鼻やのどのなどの上気道の湿度を保ち粘膜の防御システムを維持すること

③ マスクをすることによって鼻や口を直接触る機会が少なくなること

などが挙げられます。ウイルスは粒子が小さいため一般的なマスクは通過してしまいます。マスクをすることでどれだけのウイルスの侵入を防げるかはまだ正確にはよくわかっていませんが上項でハムスターを用いた研究による予防効果を取り上げました。

 

感染者がマスクをすることはとても重要と考えられています。その根拠となった一つ目の論文を紹介します。

 

Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks

DOI https://doi.org/10.1038/s41591-020-0843-2 

 

 

この論文では咳やくしゃみをする感染者がマスクをすることでウイルスを飛沫やエアロゾールの形で周囲に飛ばさない(赤点線)ことを示しています。

発症する前からウイルスを放出していることが分かっています。自分は症状はないけれどももしかして潜伏期でウイルスを排出しているかもしれない。外出するときはマスクをする。そのことで周りの人に感染をひろげないというマスクエチケットも大切な考えだと思います。

 

もう一つの論文を紹介します。この論文は韓国から発表されました。

 

Effectiveness of Surgical and Cotton Masks in Blocking SARS-CoV-2: A Controlled Comparison in 4 Patients

DOI: 10.7326/M20-1342

 

新型コロナウイルス感染者4名にサージカルマスクをした状態とコットンマスクをした状態でそれぞれ咳を5回ずつさせて20㎝離れたシャーレとマスクの外側、内側のウイルス量を測定しています。

 

 

結果です。

サージカルマスクやコットンマスクをしていても20㎝先にウイルスを拡散させてしまうというもので先程の論文と結果が異なっています。またマスクの内側よりも外側のほうがウイルスが存在しているというものでした。

マスクの外側にウイルスが存在しているということであればマスクを触れた際はかえってウイルスを手に付けて広げてしまうので、マスクを触れたらすぐに手洗いをしたほうが良いということになります。マスクを触らないということも大切になってきます。

眼鏡をおかけの方も眼鏡をさわることがありまめに洗浄するといいと思います。

 

 

N95仕様マスクを使用する際はしっかりと顔面に漏れがないように密着させてください。ちなみにN95マスクとは0.5㎛の微粒子を95%以上捕集できるマスクのことです。N95マスクの再利用に関してアルコール噴霧消毒はウイルスの捕集、吸着能力を低下させるとの報告があります。

またマスク素材の面からナノファイバー技術を用いてウイルスを通さないマスクも開発されてきています(ヤマシンフィルター株式会社が建機用オイルフィルターから応用して作製しています)。

別項で触れています光触媒繊維を用いたマスクも発売されていますが有効性が議論されているところです。

 

 

 

 

 

文責 植村 健 http://www.koseikai-uemura.jp/

 

 

下記もご関心がありましたらご参照ください。

 

http://ko-island.yokatoko.com/pr/uemura/2020/03/01/新型コロナウイルスについて%ef%bc%882020年2月%ef%bc%89%e3%80%80/

 

 

 

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