Wastewater-based Epidemiology 下水を用いて地域感染状況を把握する手法とデジタル疫学という新しい考え方について

 

Wastewater-Based Epidemiology 下水から新型コロナウイルスの地域感染状況を把握する試み

 

下水中に存在するコロナウイルスがどの程度経口感染するのか、または空気感染するのかははっきりと分かっていません。

 

2003年香港の民間集合住宅 Amoy Gardenの棟内でSARSによる200人近くのクラスターが発生しました。原因として下水管の不備によりウイルスを含んだ下水が滞留して空気感染を起こした可能性が指摘されています。

 

下水中でのウイルスの生存期間は23℃の環境下において従来のコロナウイルス229E では2-4日と報告されています。4℃の環境下では活性が20日以上も保たれています。

冬の時期の下水の温度が気になりますが、東京下水道エネルギー株式会社の報告によると外気温が5℃であっても下水温度は16℃とのことです。

 

今回の新型コロナウイルス感染においても便からのウイルス排出が報告されており、下水を調べることで地域の流行を早期に把握する取り組みが始まっています。

感染者数の報告からだけでなく、下水を通しての地域感染状況が加わることになります。

 

 

この新型コロナウイルス感染症では症状が出る前からウイルスを排出している、また症状が出ない感染者もウイルスを排出していることが分かっており、そういう方々が感染を急速に拡大させる要因になっています。しかしながら症状が全くでない場合は今のところ検査をする機会も少ないと考えられ、下水を用いたウイルスの検出方法が加わることでより正確な地域の流行状況が得られる可能性があります。

 

中国ではLAMP法を用いておよそ51分でウイルスの検出ができるセンサーが開発されています。このようなセンサーを各下水のポイントに設置するとウイルスの検出ができるようになります。設置するポイントが多いほどより細かいコミュニティの感染が把握できるようなるという仕組みです。

 

もしこの感知センサーを高精度で安価で大量に作ることができれば、各家庭のお手洗いに設置することもでき、モノとモノとがつながるインターネットの時代においては陽性が検知された際はご自身のスマートホンにその情報が飛んでくることも可能です。敷地外の下水は自治体が、敷地内はご自身で管理するようになるかもしれません。

 

但し鹿児島県では主に市外部で下水道システムを介さない単独処理浄化槽やくみ取り槽を用いている家庭もあり、ウイルスの河川への放出リスクや下水を通した正確な感染把握ができない状況も想定されます。

 

 

 

デジタル疫学の手法を用いたコロナウイルス感染初動を探る試み 武漢市の病院駐車場人工衛星写真と Baidu サーチエンジンを用いて

 

いかに早く第2波をとらえて感染拡大を防いでいくかが重要です。

前項で下水中のウイルスの断片から新型コロナウイルスを検出して地域アラートシステムを構築できる可能性に触れました。

次に紹介するのはデジタル疫学という新しい手法を用いてコロナウイルスの初動を把握する試みです。

 

Analysis of hospital traffic and search engine data in Wuhan China indicates early disease activity in the Fall of 2019

 

 

武漢市でコロナウイルスが確認されたのは2019年12月1日のことでしたが、その時期にはすでに流行が拡大していたのではないかとも言われています。

この論文では武漢市内の6 つの主要病院に来る自動車の数を人工衛星写真から計算し、また下痢症状の数を中国最大の検索エンジン会社であるBaidu (百度)社の検索数から求めています。

これらを総合するとこの疾患の流行は 報道されるかなり前の 8月から始まっていた可能性を伝えています。

 

科学技術が発達して人工衛星からの写真もきれいに見られるようになりました。病院が公表するソース以外にも主要病院に出入りする自動車の数を人工衛星写真から知ることができるようになりました。

皆さんが何かを知りたい時や気になった言葉を Google やヤフーなどで検索すると思いますが、病気に関して調べたキーワードの検索の総和や時期などのデータが疫学として用いられるデジタル疫学 ( digital epidemiology ) の将来性がこの論文から感じられます。

 

 

文責 植村 健 http://www.koseikai-uemura.jp/

 

 

ご関心がありましたら下記もご参照ください。

 

http://ko-island.yokatoko.com/pr/uemura/2020/03/01/新型コロナウイルスについて%ef%bc%882020年2月%ef%bc%89%e3%80%80/

 

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